えみし学会会長 柴田弘武
この北上市は昨年のゼミナ−ルで基調講演をして下さった門屋光昭先生が、「鬼住む誇り」の町としてご紹介して下さったゆかりの町です。なぜ「鬼住む誇り」なのかは、2日間の今回のゼミナ−ルにおいていっそう明らかにされることと思います。
まずは今回基調講演をして戴けるのが、この北上市で生まれ、育ち、北上方言によって東北の魂を歌いつづけてこられた東海大教授・日本現代詩歌文学館副館長相澤史郎先生です。先生はその詩集『夷歌』によって、1998年には第7回「丸山豊記念現代詩賞」を受賞されております。
山の神 季節はずれぬ 山がら神さま降りできた。 (酸性雨で大岩もぼろぼろ) 顔中ひびだらけぬなって 何がいいでそうに 悲すぐきばって (森ぁ伐られで、水切れで) いま神様 わ−って泣げば 世界は爆発だ (乳の山姥も 何処さが追われ) 何もいわねぇで 蒼ざれ 痩せ肩落どすて (鳥も飛ばねぇ 三途の河原よ) 寒風沢野の風の中さ消えでった。
続けて先頃傑作『えみし風聞』を出版された会員の宮野英夫さんが、その書の副題に「史書の余白から」と名付けられた、苦心の推論の過程などを発表されるはずです。まさに「えみし学会」ならでは聞けないお話になるかと思います。えみし学会の実力が発揮されることでしょう。
初日最後を飾るのは武田登子先生の馬頭琴の演奏です。先生のプロフィ−ルと馬頭琴については「えみしかわらばん」第16号にご案内申し上げました。「いにしえの縄文人やアイヌの人々の文化に酷似している」というモンゴルの民族音楽から、私たちは改めて「えみし」について考えさせられるのではないかと思います。いやそんな堅苦しいことは抜きにして、ただただその演奏に酔えばいいのかもしれません。
2日目は会場を門屋光昭先生が館長をなさっている「鬼の館」に移し(途中江釣子古墳群を見る予定です)、同館主催の「鬼学講座」に合流させて戴きます。お話は東北史の権威高橋富雄先生です。先生にはその長いご研究の総決算として、「蝦夷とはなにか。その呼称がなぜエミシ・エゾでなくエビスでなければならないのか。東国・日高見国やアイヌとの関連はどうなるか。東国蝦夷経営。それは日本古代国家が完成するうえでの最終課題でもあった」という問題意識で古代東北史の通説への果敢な再検討を加えられた『古代蝦夷を考える』(吉川弘文館、1991年刊)があります。「文献から見た日高見国」という演題からその蘊蓄をたっぷり聞かせて戴けるものと思います。
午後からは「鬼の館」でその名もずばり「鬼剣舞」を見せていただきます。勇壮な舞の背後にあるものは何か。
その後はバスで立花毘沙門堂、国見山極楽寺跡、如意輪寺、樺山遺跡などのフィ−ルドワ−クです。樺山遺跡は縄文中期のスト−ンサ−クル、江釣子古墳群は古墳時代末期のえみしの墓(?)、極楽寺跡は平安時代の仏堂跡、如意輪寺と立花毘沙門堂はその遺構とされます。後者には平安時代の木造毘沙門天立像が残されるなど、いずれも「えみし」を考える上で欠かすことのできない歴史遺物を見ることになります。お楽しみ下さい。
最後になりましたが、今回のゼミナ−ルの開催につきましては北上市教育委員会の御後援を戴き、また鬼の館とは共催という形をとらせて戴きました。あわせて厚く感謝申し上げます。
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