日本霊長類学会会員の 中村民彦さん(右)らが見つけた厩猿の左手の骨と頭がい骨。 左は長内三蔵さん=(岩手県山形村川井) 河北新報 1998-12-24 「厩猿信仰」岩手にも サルは馬の神様 - 山形村の農家で骨見つかる 馬の安全を願って猿の骨を馬小屋に祭る厩猿(まやざる)信仰が、岩手県でもあったことを示す猿の骨が二十三日までに、日本霊長類学会会員らの謝査で見つかつた。 東北地方での発見は二例目となり、主に九州地方に伝わるとされる厩猿信仰が全国的に分布していた可能性も出てきた。 調査したのは日本霊長類学会会員の岩手県滝沢村、会社員中村民彦さん(52)、京都大霊長類研究所の川本芳助教授ら五人。 岩手県山形村の農業長内三蔵さん(79)ら三件の農家で、ニホンザルとみられる猿の頭がい骨計四個と左手骨一個を見付けた。 長内さん方で見つかった骨は、野球ボール大の頭がい骨一個と長さ約十センチ太さ約四センチ左手の骨。 約三十年前に家を改築した際に布にくるまれた状態で納戸にあったのを見つけ、保管していたという。ほかの二件で見つかった頭がい骨もほぼ同じ大ささだった。 中村さんらの聞き取り調査では、村内では昔、猿は牛や馬の守り神とされ、骨を薬にしたこともあったという。 また、左手の骨は道具としても使い、サヤインゲンやキュウリの種を植える穴をあけたという言い伝えがある。 厩猿信仰のものとみられる猿の骨は、平成五年に秋田県河辺町で頭がい骨十三個と、左手の骨一個が見つかっている。 中村さんは「東北でも厩猿信仰が広くあったことが確認できた。頭がい骨と一緒に見つかる手の骨が、なぜ左ばかりなのかも探りたい」と話す。 中村さんらのグループは平成二年に調査を開始。厩猿信仰のほか、岩手県沿岸部の五葉山に生息するニホンザルのルーツ、下北半島のニホンザルの生態なども研究している。 (厩猿信仰)農耕馬の安産を願って馬小屋に猿の頭や左手の骨を祭る民間信仰 九州では福岡や大分など4県で多数の頭がい骨と十三個の左手の骨が見つかっている。 頭がい骨は御厨屋(みくりや)と呼ばれる木の箱に入れて祭る。左手は道具としても使われた。 安産を願って妊婦のおなかを猿の左手でさする(秋田県河辺町)、 川魚の豊漁を願って水中に浸す(九州地方) などの風習がある。
日本霊長類学会会員の 中村民彦さん(右)らが見つけた厩猿の左手の骨と頭がい骨。 左は長内三蔵さん=(岩手県山形村川井) 河北新報 1998-12-24
「厩猿信仰」岩手にも サルは馬の神様 - 山形村の農家で骨見つかる