青森で世界最古級の土器片
炭素測定で1万6500年前
縄文の起源を覆すか
青森県蟹田町の大平山元T遺跡で昨年出土した土器片が、世界最古級の約1万6500年前のものであることが、同遺跡発掘調査団(団長・谷ロ康浩国学院大講師)と名古屋大などによる最新の測定法で明らかになった。
これまで、中国の長江(楊子江)中流城の遺跡から出土した土器が地層中の花粉分析で約1万4000年前と分かり、最古とされていたが、今回の結果はさらにこれを約2500年もさかのぼり、確認された中では世界最古の土器とみられる。
縄文時代の始まりは約1万2000年前とされており、これより4500年も古く、今後、縄文時代の起源をめぐり論議が起きそうだ。
岩手日報 1999-4-18
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この土器片は昨年七月、谷ロ講師らの調査で、縄文時代草創期とみられる地表から数十センチの赤土層上部から見つかった。
小さな破片ばかり四十数点が出土し、同時に掻器(そうき)などの石器も見つかっている。谷ロ講師が、三センチ角の土器片五片の分析を名古屋大年代測定資料研究センターに依頼した。
同センターの中村俊夫助教授らはまず、土器片に残っていた徴量のすすを以前からある「炭素14法」で分析。大気中の炭素14の濃度は年代によって変化し、実際の暦年代とずれが生じる恐れがあるため、暦年代が正確な木やサンゴの年輪を使って補正する最新の測定を行い、1万6500年前という数字を算出した。
同遺跡ではこれまで、旧石器時代から縄文時代草創期にかけての土器や石器が出土している。
データの蓄積必要
松浦秀治・お茶の水女子大助教授(先史人類学)の話
日本国内では1万2000年前の土器が数例出ているが、この年代の出土は世界でも例がない。ただし「最古」が一気に数千年もさかのぼるので「その間はどうだったのか」という議論になる。そのギャップを埋める作業が必要になる。各地の遺跡、複数の遺物のデータを積み重ねていく必要があるだろう。
炭素14法
崩壊した放射性の炭素14の割合から土器や化石などの年代を特定する方法。
動植物が死んで大気中から炭素を取り込められなくなると、体内の炭素14は一定の速度で減少するため、減った割合を調べれば生物が死んだ時期が分かる。
太平山元T遺跡の土器は付着していたすすから年代を算出した。
炭素はあらゆる生物に含まれることから、考古学以外にも、文化財や活断層の研究など幅広い分野で応用されている。
土器の年代特定
定説が変わるか
補正法を国内初適用
青森県の大平山元T遺跡で見つかった土器の年代特定では、暦年と炭素14法の年代算出の「ずれ」を木やサンゴの年輪データで補う方法が、国内で初めて適用された。専門家は「今後、同じ方法での分析が進めば、土器の年代についての定説が大きく覆る町能性がある」と指摘している。
1940年代に考案された炭素14法は、崩壊した炭素14の割合から年代を測定する方法で、半減期の十倍に当たる約六万年前までの測定が可能とされている。しかし実際には時代ごとの環境によって変動する大気中の炭素14の濃度が、一定との前提で測定するため、実際の暦年とはずれが生じる。
今回の土器は、炭素14法だけを用いた方法では約1万3000年前と測定され、補正後の年代はそれより約3500年古い約1万6500年前だった。
分析を担当した名古屋大年代測定資料研究センターの中村俊夫助教授は「縄文土器の起源という国際的な問題を、世界共通の土俵で議論するためにも、炭素14法で測定した年代は(諸外国のように)きちんと暦年に補正すべきだ」と話している。